Notes

「期間限定」 Christmas Cocktail Pairing Dinner 2017 報告

 毎年恒例となりました カクテルと料理のペアリングを お楽しみいただく
「Christmas Cocktail-Pairing Dinner」2017を

開催致しましたので ご報告させていただきます。

 20年前の創業当時から取り組んできた
「酒と料理」「カクテルと料理」の相性をお楽しみいただくことを
追求してきた我々の仕事のスタイルが、
2012年「Diageo World Class」Japan-Finalでの
「フードマッチング部門」優勝を機に、
全国の方々から注目いただけるようになった事は嬉しい限りです。

 今年11月にはパリ / ヴァンドーム, シャンゼリゼ,
サン・ジェルマン・デ・プレなどに高級食材店と

レストランを営む名門「Da-Rosa」のオーナー
ムッシュJose da rosaにも ご来店いただけたり、
岐阜県知事にも カクテルペアリングを お楽しみいただくことができました。

 今回のクリスマス・ペアリングディナーは12/23,24,25の三日間。
ほぼ、毎年ご参加頂いてきているリピーター様が多く、
今回も、全国から同業バーテンダー、ワイン醸造家など
専門家の方からも多くご予約を頂戴し、
打ち合わせの段階から緊張感のあるものとなりました。

 以下は試作時のメニューと料理写真になります。

 ※当日変更された箇所もあります。ご了承ください。

今回のメニュー表

Designed by Shigeyuki Nakagaki.

 第一の皿
「あったか カレーうどん」
「ズワイガニとマンステールのクロスティーニ」

 

 寒空の中お運び頂いて、まずは席に着いて「ホッ」と

暖かくなっていただきたい。
そんな気持ちでご用意した「あったか カレーうどん」。
しかし、和食ではなく  あくまでも西洋料理としての解釈で。

 昨今、革新的な料理に取り組む海外シェフが果敢に挑んでいる
「だし」を使ったクリエイティヴ。
この目線を「だし」で育った日本人が、逆手で挑んでみた次第。

 これでもかと、たっぷり使ったカツオとあごで取った芳醇な「だし」に、

クミン、カルダモン、コリアンダーを強調させた

カレースパイスのコントラストが新鮮な、

旨くて スパイシーなスープ( 勿論 無化調 無添加。)

 麺は シナモンを練りこんだ デュラムセモリナの自家製麺(パスタ)。
仕上げには クローブ(丁子)の香りを纏わせたフォーム・ド・ミルク。
「ホッとできて、新鮮。」そんな味わいを 目指しました。

 合わせてお召し上がりいただくのは、
旬に入った日本海のズワイガニに、

存在感のあるウオッシュチーズ:マンステールを 乗せて

焼いたクロスティーニ。

 カニの身の甘やかさと、チーズの臭み(香り)と

カレースープを交互に味わっていただくことで、

これから始まるコースに向けて、

味覚と好奇心を、フル回転状態に お目覚めさせて戴きます。

 ペアリングさせるお酒は「二種のジン ソーダ割り」
昨今の洋酒界の最大注目株とも言える クラフトジン。
ベースアルコール自体が しっかりしたジンなら

トニック・ウォーターや柑橘の力を借りなくても
ソーダ割りだけで美味しく、アペリティフにもぴったり。

 今回はスペイン・ガリシアの葡萄を原料にしたジン「ノルデス」と
イギリスのブリュワー「ブリュードック」がリリースした

「ローンウルフ」を ブレンドしました。
「ノルデス」は アフターに拡がるセージの香りが鮮烈なジン。
「ローンウルフ」は「コリアンダー爆弾」のような超個性派のジン。
 個性の塊のような、この2種類のジンに、 
岐阜産のカフィアライム(コブミカン)の葉をインフューズ(漬け込み)することで、

尖った個性同士を華やかな芳香へと導き

心地のよい飲み心地のジン・ソーダへとチューニングします。

 

 セージの香りが ウオッシュチーズと蟹、
コリアンダーの香りが カレースープと、シナモンパスタに響き合う、
「香り」を軸としたペアリング法です。
そして、
漬け込んだカフィアライムの香りが、カレースープと蟹の味わいを、

「プーパッポンカリー(タイ料理の蟹のカレー炒め)」を想わせる、

東南アジアまでをフィールドに拡げた

グローバルな美味しさの世界を生み出します。

 これは、

僕が以前から提唱してきたカレーとジンの相性

(danchu:2017/2月号など)を、

更に一歩進めたペアリングのカタチを表現できた

一品にできたと思っています。

 第二の皿

「帆立貝柱のコテ焼き ヴァニラ風味」
「ガスパチョのジュレ」
「サーモンの温かいお刺身 アニス風味」

 活きた状態から バニラビーンズを加えたオイルに漬け込んで

香りを移しながら身を締めた 帆立貝柱の上面だけを

焼きゴテで焼き付けて、メイラード反応の美味さで仕上げた
帆立貝柱のお刺身。

 ガスパチョは 伝統的なレシピで仕込んだ正統派のガスパチョを、

お得意の遠心分離機にかけることで、透明なエキス分だけを
分離してジュレにしたもの。

 サーモンは アニスオイルに漬け込んで、低温加熱でコンフィにしたもの。

 ペアリングするお酒は
「ニッキーズ・フィズ」
1923年にパリで生まれた ジンとグレープフルーツのカクテルです。
これを、Burleigh’s-Gin : レスタードライを ベースに、

搾りたてのグレープフルーツ果汁と、郡上八幡のアブサンと
ほんの少量の海塩を加えて カクテルに丸みと 甘みを与えて、
無加糖の ロングカクテルに仕上げました。
グレープフルーツの甘酸味と、塩のミネラル、
ジンのボタニカルと アブサンのボタニカルが
「サーモン」
「アニス」
「帆立」
「ヴァニラ」
「トマト」
「セロリ・パプリカ」に、
呼応して、白ワインを合わせるよりも、
焦点の合った、料理とのマリアージュを 生み出すことが出来ました。

 添えたハーブは フェンネルと小松菜のマイクロピノ。
甘く 青い香りと食感が さらに料理に寄り添います。

 第三の皿
「バスク風 もなか」
「ペリコール風 もなか」
バスク地方の郷土料理「ブーダン・ノワール」は 豚の血のソーセージ。
ペリゴール地方の名産品の「フォア・グラ」。
これを 一口サイズのもなかに仕上げました。

 ペアリングするお酒は
「ボトルド・カクテル」
お客様の前で 大振りのガーローネの中で
「コニャック」
「濃く淹れた ダージリンティー」
「自家製  無加糖  カシスリキュール」
「チェリーリキュール」
「フランボワーズ・ビネガー」

「白バルサミコ酢」

「自家製クローブ・ビター」
などを ブレンドして、ワインボトルに詰めます。
そして、料理と一緒にワイングラスにサービング。

 2012年「DIAGEO WORLDCLASS」ジャパンファイナル
フードマッチング部門で 優勝させて頂いた時の オリジナルカクテル
「赤ワインの再構築」
の 2017年度 リメイク ver.です。

 今回のお客様のひとり、
栃木のワイナリーで活躍されている ワイン醸造家

「N」さんに 恐る恐るに ご提供したところ、、、

「鳥肌が立った。
ワインに必要な香りのほとんどがこの中に表現されている。
カクテルというよりワインそのものだ。
カクテルでこんな表現ができるなんて。。。」
と、身に余る嬉しいお言葉を、、、
「今回のコースでの大収穫。」と、

お褒めの言葉も いただくことができました。

 第四の皿
「”SUKIYAKI” 伊太利亜風」
岐阜の牛と葱、茸をシェリーとマディラで煮込んだソースのリゾーニ。
リゾーニとは 米粒型に成形されたパスタのことです。
 お米も、お醤油も、みりんも 砂糖も 使わずに、

西洋料理の技法だけで創り上げられた スキヤキ丼的料理。
上には 黒ごまのチュイルと 低温オイル・コンフィされた卵黄。
いわば、最高に贅沢な「牛丼、玉(ぎょく)乗っけ」。
 このスキヤキ風テイストに合わせるカクテルとして 狙ったのは、
清酒のような、艶やかさがあり、なめらかな喉ごしのクリーンなカクテル。
欲を言うと 日本酒の飲み心地はそのままで、

日本酒ほどの甘さのない 飲み物が理想的・・・。

 これのベース・スピリッツにはパスタと同じく 麦を原料にした、

日本のむぎ焼酎の透明感ある銘柄をセレクト。

ホースラディッシュをインフュージョン(漬け込み)することで、

香りと、心地よい辛味を転写しておきます。

 岐阜の白川茶の新茶を水出しすることで、

とろんと旨味ある冷茶に仕立てて、

ホースラディッシュスピリッツと合わせます。

 さらに 料理との親和性を高めるために

カクテルではほとんど使われない パセリの香りをトッピング。

日本料理の技法でパセリを「青よせ」にして、

一緒にステアしてマティーニスタイルに仕上げました。

 スキヤキ丼的な馴染みある味わいの料理に、

清酒的な馴染みある飲み口のお酒、
加えた新茶と ホースラディッシュ、

パセリのフレーヴァーが最高の相性となり、
「うわー! 合うわー!」と、

喜びの声を、多くのゲストから頂戴することができました。

 第五の皿
「真鯛と牡丹海老、リコッタチーズのカネロニ」
しっとりとポワレした真鯛の身と

牡丹海老の甘やかでクニュっとプリっとした食感、

リコッタチーズの爽やかさを 手打ちのカネロニに鋳込んで、

ソース・アメリケーヌと ソース・モルネーを重ねて焼き上げました。

 ペアリングするお酒は、
「ソース・アメリケーヌ」の仕込みで

フランベに使う アルマニッャクをベースに、
「ソース・アメリケーヌ」+「ソース・モルネー」の組み合わせを、
「ソース・ニューヴァーグ」に 拡大解釈することで

マディラ・ワインを副材料に。

 甲殻類と相性の良いオレンジ果汁を加え、

ソーダで満たして、アルマニャックと マディラベースの

「ボッチ・ボール」的カクテルに仕上げました。

 料理を食べる前に カクテルを味わっていただくと、
この時期の国産オレンジ由来の 爽やかな酸が拡がり、ドライな印象。
料理を一口味わっていただいてから カクテルを飲んでいただくと、
カクテルの味が 蜂蜜を想わせる甘やかな味わいに変化します。

 「料理と組み合わせることによって カクテルの味わいを変化させる。」
これも、カクテルペアリングの新しい表現方法の

ひとつとなるかもしれません。

 第六の皿
「クリスマス・ターキー」
 子供の頃観た アメリカのホームドラマや、
アニメ「Tom & Jerry」などのクリスマスのシーンに
必ず登場していた、焼きたての七面鳥の丸焼き。
あの幸せな、美味しそうな シーンを 再現したくてご用意した
今回のメインディッシュです。

 しっとりと、ジューシィーな部位だけを 切り分けてご提供します。
ソースはシンブルに七面鳥の焼き汁だけを
集めて煮詰めたグレイヴィー・ソース。
「古き佳きアメリカ」の美味しさを表現しました。

 ペアリングするお酒は
バーボン・ベースのショート・カクテル。
今が旬の「人参」を、さっと水煮して 
甘さが出たところで煮汁と一緒に 裏ごし。
この甘いジュースに、バーボンを加えて、
皮ごとミキシングした金柑の甘酸っぱくホロ苦いピュレと、
無添加で濃縮されたクランベリーの純粋果汁の酸で、

甘酸味バランスを調整してシェイクします。

 人参、金柑、クランベリーは ターキー料理の

ソースや 付け合わせにもよく使われる素材。

焼きたての肉汁に とても合う、さっぱりとした

「飲むサラダ」のようなカクテルに仕上がりました。
使用したバーボンの銘柄は
もちろん「Wild Turkey」。(笑)

 第七の皿
「ブルーチーズケーキ メープルベーコン添え」
バターの香り豊かに焼き上げた タルト生地に、

ゴルゴンゾーラ・ドルチェとデンマーク・ブルーチーズを

効かせたフィリングを流し込み 焼き上げた

ちょっと大人なチーズケーキと、

メープルシュガーと一緒に 香ばしく焼いた

カリカリ ベーコンの組み合わせ。

 これにペアリングするお酒は
「ホット・ウィスキー」
遠赤外線でトーストされたメープルウッドのフレーヴァーを
纏った カナディアンウィスキーがベース。
旬の 飛騨りんごの果汁と アールグレイを加えて

仕上げたホットカクテル。
「合わない訳がない。」
カクテルだからこそできる、

鉄板の組み合わせでフィニッシュです。

Place mat 2017. by Shigeyuki Nakagaki.

 カクテルと料理のペアリングの世界は、
料理に対する 

ワイン,

日本酒, 

ビールなどが
永い時間をかけて築いてきた
強固な信頼(ペアリング)関係の中から、
「カクテルも、料理に合わせることができるんです・・・。(弱)」
と、第三勢力的に新興してきた価値観であり、
まだまだ脆弱な文化でありジャンルです。
しかし、カクテルというものの許容範囲と
クリエイティヴの可能性は、際限なく広いので、
これからも停滞することは無いでしょう。

「カクテルでも料理が楽しめるんです。」
ということを知っていただくことに多くのバーテンダーが
心を砕いてきましたが、
ようやくその段階を超えて
「ワイン、日本酒、ビールなどを超える表現ができる
クリエイティヴ・ドリンクこそがCocktailであり、
その表現力を活かすことで、もっともっと食事の時間と
料理そのものを楽しんで戴ける。」
と胸を張って言える時代が やって来たのではないかと 感じています。
これは
世界中のバーテンダーが、
「美味しいものを、美味しく楽しんで欲しい。」
という、素直でシンプルな理想を仕事の中に追求することで、
カクテル、製菓、料理、果てはガストロノミック全体への
理解と技術の習得に勤めてきた努力の賜物であると
僕は心の中から感謝しています。

 カクテルと料理のペアリングは、他の飲料のペアリングと違い、
栓を開けるだけで完結させることが出来ないので、
開発時間、仕込み、オペレーションなどの入念な準備時間が必要なため、
限られた店でしかお楽しみいただけないのが難しいところで、
普及には時間がかかるのかもしれませんが、
中途半端なクオリティのペアリングの模倣店が増えることより、
時間がかかってでも、本物だけが受け入れられる市場になることを
切に願っています。

 有り難いことに我々は、
毎回このフェアを心待ちにしてくださる
ゲストに恵まれて 今日まで続けて来ることができました。
リピートくださるお客様の笑顔が見られる限り

新しいメニューづくりに挑戦していけます。

好奇心をいつまでも失わない
素晴らしいお客様と、
素晴らしい料理を形にしてくれる
パートナーであるシェフ : 田島裕士と
女房。
サポートしてくれるスタッフ全員があってのこと。

親愛なるお客様、
そして、スタッフ。

この環境に心から感謝しています。
ありがとうございます。
これからも どうか末長くよろしくお願い申し上げます。